行列力学(ぎょうれつりきがく、matrixmechanics)は、量子力学における理論形式の一つである。マトリックス力学とも呼ばれる。 1925年にハイゼンベルグによって提唱され、ボルン、ヨルダンらともに展開された。
ボーア・ゾンマーフェルトの量子条件やアインシュタインの光量子論に代表される前期量子論は、原子構造やその発光スペクトルの解明といった一定の成果をあげるものの、量子力学的な世界を体系的に記述する枠組みを与えるものではなかった。1925年、当時23歳だったゲッティンゲン大学の講師ハイゼンベルグは、古典的な物理描像を捨て、新しい量子力学の理論の定式化を行った。行列力学では運動量や位置などの物理量を行列を用いて表現し、ハイゼンベルクの運動方程式と言う方程式で、自然を記述する。
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行列力学が明らかにした物理量の非可換性は、量子力学における不確定性関係の構造を浮き彫りにした。古典力学では運動量や位置はある時点においては確定した(決定論的)値を持つが、量子力学では物理量の非可換性により、例えば運動量と位置とは同時に確定値を取れない。
量子力学の他の表現法としては、シュレディンガー方程式で記述される波動力学、ファインマンの経路積分法などが存在する。行列力学と波動力学は対立していたが、後にこの2つの理論は等価であることが波動力学を構築したシュレディンガーによって証明され、共に量子力学の基礎的理論となった。